2021年2月2日火曜日

くばる~空の木さんのこと~

2020年の夏、

空の木さんに取材したときのことを、今もよく思い出します。


正式なお名前は

特定非営利活動法人「夢織り工房 空の木」。

就労継続支援(しゅうろうけいぞくしえん)に取り組んでいる事業所さんです。

「はたらきつづけること」を「ささえる」場所です。

からだ、こころに「しょうがい」があるなどで、

働き続けることが難しい人を、支援しています。


施設長さん、全盲の利用者さんに話を聞いた経験は、

「がつん」とくるものでしたし、

ここで支援者として働く人のことは、とくによく思い出します。


その人は、

「こういう事業所で働くって、思ってみたこともなくて」

と、にこにこ笑いながら気持ちを話してくれました。


障がい者支援や介護などにかかわる資格も経験もなく、

どういう場所かも、はっきりとはわかっていなかったそうです。

初日、利用者さんが働くどころか大の字に寝転んでいるのを見て、

「私、えらいとこ来てしもたんでは」と、あぜん。


少し考えて、彼女がしたこと…

それは「よく見ること」でした。

利用者さんは、一人ひとりちがうから、どんな人が、いつ、どんな行動をするか知ること。

そして、

必要かなと思われるときに、

必要かなと思えることを、くばってました。


「気配り」?


「くばる」っていうと「気配り」とか「目配り」とか。

一言でまとめてしまうと、それに近いのかもしれないです。

彼女は、よく見て、聞いて、感じ取って、

「ここぞ」というときにだけ

「きっと、これはこの人にいま、必要かも?」と思うものをくばってました。


あるときは、優しい声かけかもしれない。

笑顔だけかも。逆にプンプン顔ってこともあります。

「自分だけでしたいんやろな」と思うときは「放置」。

「なんか、ひとりになりたいらしい」と思えるときは「見守り」。

そして必要なら、手を添えたり、背中をなでたり。


「私ね、支援っていっても、何をしたらいいか、ぜんぜんわからなくて。

わからないから、きっとこうやろ、いや違ってた、の繰りかえしで」


そんなある日、

利用者さんたちで「お昼ごはんを注文しよう」ということになったそうです。

目が見えない、人と会話するのが苦手、いろんなハンディを抱えた人たちだけで、

自分にできることを考えて協力しあい、

「このメニューは3つ、こっちは2つ」などと四苦八苦してリストにし、

お店に電話することができたそうです。

もちろん、そんなこと、初めてでした。

すごい前進で、みんなびっくりでした。


一歩ずつ変わるんやな。

その一歩ずつを支えているんやな。

その一歩ずつに、大きな意味があるんやな。

「やってあげる」がメインではなく、

「くばる」の成果が、こういうところに現れるんやな。


この世の中の、ほとんどの仕事って、

そうやって、よく見て、よく聞いて、感じ取って、

「くばる」ことなのかもしれないな。

私は「押しつけ」ではなく、彼女のように

よく見て、よく聞いて、感じ取って、

「くばる」仕事ができているかな。

「くばる」暮らし、やっていけてるかな。


空の木さんが支援している人だけじゃなく、

どこを見ていても

何かを抱えてつらい人、こころやからだが弱っている人が

増えてるんじゃないかなと思います。


「くばる」って、どうやったら、うまくいくだろう。

私も答は持っていないけど、

「きっとこうやろ、いや違ってた」の繰りかえしで、

「くばる」毎日を過ごしたいなと思います。


特定非営利活動法人「夢織り工房 空の木」ホームページ

https://www.soranoki2003.org/